Female Yakuza Tale 『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』

Female Yakuza Tale　(やさぐれ姐御伝 総括リンチ)
連休中、石井輝男監督作品は、2007-09-24に感想を書いた『怪談昇り竜』以外に、『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』も観たんですが、これ、傑作ですよ！
今の東映にはそんなイメージありませんし、僕も幼児期のことなんで全然知らなかったんですが、60年代末から70年代初頭に、東映ポルノ路線と呼ばれる18禁映画を、東映が配給していた時期があって、この映画もその路線の一本。東映ポルノ路線の２大スター女優の一人が、この映画で主演している池玲子さんです（もう一人は杉本美樹さん）。東映ポルノでは、この、池、杉本の二大女優らが、裸を惜しげもなく披露し、濡れ場も演じて、当時の世の男性達を悩殺し、喜ばせていたそうです。
『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』の話しに戻りますが、この映画は、オープニングから、すごいです。雨の中を、着物姿で番傘を差す、池玲子に、ヤクザ風の男性達が斬りかかっている。傘で刃をかわし、猪鹿お蝶と名乗るやいなや、傘から仕掛けられた刀が飛び出し、池玲子が応戦、男達を斬りまくり、雨の溜まりが血に染まっていきます。ま、女性が主人公の任侠物なら、血の量はともかく、大立ち回りはお馴染みってシーンでしょうが、この映画の場合、何がすごいって、流石、ポルノ路線だからか、石井輝男だからか、池玲子の着物が、別に脱がされたわけでもないのに、どんどん脱げていきまます。そして最後には、なぜか素っ裸になっていて、おっぱい揺らしながら、斬りまくります（笑）。このオープニングは、エロというより、開放的で、爽快に笑えますんで、おそらく女性の方が観ても楽しめるんじゃないかなと思えるぐらいです。笑えるけど、かっこいいですし。エロかっこいい女性は、三十数年も前に既にいたんですね。
で、そのオープニングをはじめ、この映画にはなんの脈絡もない裸がいっぱい出てきます。女性器の中を使って薬物の運び屋をさせるとか、滅茶苦茶下世話な設定ですし、ポルノ路線なんで、性交シーンも当然有り、血まみれで殺しまくるシーンもあって、「エログロ」な映画であることは間違いないのですが、石井監督の資質なのか、描き方が巧いのか、ほとんどが、何か笑いを誘ってくれて、陰湿な暗さが、ほとんどなく観られるんですよね。かといって、エロやグロを見下して、すかして撮っているという感じもなく、それはそれでやはりあるのですから、不思議というか、石井監督やっぱりすごいというか。ネタバレになるので、詳しく書きませんが、ラストのバトルは、この作品中でのエログロワールドのまさに集大成で大団円って感じで最高。
繰り返しますが、とにかく、傑作です。奇形人間や、昇り竜同様、描ききられてはいないかもしれないが、魅力的な登場人物達とシーンも盛りだくさん。
『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』は、『恐怖奇形人間』や『怪談昇り竜』 と同様、日本ではDVD未発売ですが、シリーズ一作目『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』（鈴木則文監督作品）の方は、最近DVDがリリースされたので、そのうち、やさぐれ姐御伝も、日本盤がリリースされる可能性はあります。ただ、精神病院のシーンが、表現狩りされそうな危うさはあるので微妙かもしれません。尚、これもネタバレになるといけないので詳しくは書きませんが、この病院で起こった不幸は、この映画の中では数少ない暗い陰を残す、せつないエピソードです。
DVDは、画質、音質ともに良いです。透明ケース、付録のお蝶〜池玲子のシールや、絵が動いてテーマ曲も流れるメニュー画面など、センスよく、DVDパッケージとしても満足のいく出来映え。尚、リージョン1なので、購入検討される方はご注意を。リージョン1再生できる環境が必要です。「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」も同様のパッケージで、北米盤出ていたので、欲しいのですが、どうやらこちらはなぜか廃盤になってるようなのが残念*1。

(2007-09-28 追記）やさぐれ姐御伝からを中心に、池玲子主演映画の歌とBGMを集めたオムニバスが出てました。ちょっと欲しい。

やさぐれ姐御伝 総括リンチ~やさぐれ歌謡最前線

*1:【2007-09-30 追記】[http://www.panikhouse.com/releases/sex_fury_1973_japan.html:title=Panik House サイトの Sex & Fury『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』紹介ページ] によると、廃盤というより、クリアケース版は初回生産1万本だったようで、全て売り切ってしまったみたいです。もう少し早く知ってれば。クリアケース版追加生産してくれないかな。[http://www.panikhouse.com/releases/female_yakuza_tale_1973_japan.html:title=Female Yakuza Tale『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』のクリアケース版]も初回1万本生産のようです。【2007-10-08 追記】[http://www.panikhouse.com/blog/its_official_sex_fury_has_sold_out.html:title=Panik House のブログ November 09, 2005] を読むと、限定の透明パッケージ版が売り切れた後、パッケージを変えたものを出していたようですね。こちらも、売り切ったってことでしょうか。