マシンガール池玲子

ShowTime経由で東映おとなの映画BB配信の、池玲子主演「恐怖女子高校 不良悶絶グループ」鑑賞。
恐怖女子高校シリーズ3作目。本作から鈴木則文に替わり、全2作の助監督や「女番長タイマン勝負」に脚本の一人として参加していた志村正浩が監督デビュー。脚本には志村正浩の他、関本郁夫鈴木則文が名を連ね新人監督を万全サポート。
米軍基地がある街に住む、池玲子演じる主人公・野中鷹子は、聖愛女学園の名家のお嬢様ばかりのクラスに在籍し、学園を締めているお嬢様スケバングループ「紅ばら会」の副番長。なぜ、名家のお嬢様達がスケバングループ作っているのかは特に説明ないので、さておき、番長の転校で空いた番長の座に、鷹子と同じく副番長である、衣麻遼子演じる絹枝のどちらが座るが決めることに。ここで、お約束のタイマン勝負かと思いきや、学級委員決めるみたいに教室で投票による決戦。流石お嬢様スケバングループ、番長の決め方がお上品です。そして鷹子は一票差で番長に。
しかし、池玲子演ずる主人公がお金持ちのお嬢様で学園の女番長なんて、そんな生ぬるいままなわけもなく、映画開始から間もなく、陰謀により心中を偽装されて殺された父親の死により、「紅ばら会」からも、お嬢様クラスからも追い出され、スクラップコースと身も蓋も無く呼ばれている学園ヒエラルキーの最下層クラスへ編入させられる。
鷹子は、紅バラ会時代虐げていたスクラップコースの叶優子演じるリンダ達と、最初は対立するものの、リンダとのタイマン勝負での勝利や、父親の顔すら知らない彼女たちの境遇に触れ、和解。
アメ公と母親のセックスを目撃してショックで家を飛び出していた鷹子が、リンダの家にいくと、そこには米兵と寝るリンダの母親の姿が。そんな母にも、気を遣い、とても優しかったリンダの姿を見て鷹子が「平気なのかい」と尋ね、リンダが、「マミーも、ああして生きていく他、仕方ないんだよ」と答えるシーンが、凄くいい。
そして、鷹子はリンダらと「恐竜会」を結成。「紅ばら会」クラスに乗り込み、お約束の仁義を切って絹枝らに宣戦布告。
紅バラ会との抗争の中で、ジープに牽かれ怪我を負った鷹子は、父の偽装心中相手の弟・二郎に助けられたことで、父の死の真相と、アメ公と組んだ、絹枝の父速水(名和宏)が黒幕であることを知る。
境遇と貧富が対称的な「恐竜会」と「紅ばら会」の対立、在日米兵問題と蹂躙される女性達、鷹子と二郎の速水らへの復讐と、二人の恋愛などが絡む、ストーリーは巧く、まとめられているし、社会問題への提起も見られて面白い。ただ、前作までと違い、杉本美樹という、池玲子と互いに存在感を増させる強力なライバルの不在と、鈴木則文との演出の違いはやはり大きいのか、東映スケバン映画らしからぬ、小ぎれいすぎる(あくまで、他の東映スケバン作品との当社比)、まとまり方だという印象もあり、面白い作品なのだが、物足りなさもないわけではない。もっと池玲子の圧倒的な存在感を観たいし、もっと映画全体から溢れる猥雑でアナーキーででたらめなパワーを、このシリーズで観たいのだ。しかし、その印象は、土壇場でいい意味で一変する。この映画は最後の10分がとにかく素晴らしい。
以下ラストバレ含む。
「恐竜会」と「紅ばら会」の角材や竹刀を振り回しての迫力ある決闘、重症の二郎を残しそこに駆けつけ、「どけどけどけー」と争いをかき分け、卑劣な策謀でリンダを死に追いやる元凶を作った、絹枝の元へ向い「勝負はこれからだよ!」と叫ぶ池玲子姐御が、流石の存在感と格好良さで魅せてくれます!
後に鈴木則文と志村正浩が監督と脚本で組む「聖獣学園」での、多岐川裕美による父親への復讐の原型ではないかと思われる、名和宏と衣麻遼子の破滅のシーンを挟んでクライマックス、二郎やリンダの敵を討つべく、アメ公達に、次郎の遺したマシンガンをぶっぱなす、女番長<スケバン>マシンガールの池玲子姐御!最高に素敵すぎるよ。
セーラー服と機関銃は、薬師丸ひろ子より池玲子の方が8年も早かったのであった*1

恐怖女子高校 不良悶絶グループ [DVD]

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*1:「恐怖女子高校 不良悶絶グループ」は1973年、「[[セーラー服と機関銃]]」は[[薬師丸ひろ子]]主演映画が1981年・原作は1978年