『ハドソン河のモスコー』 Moscow On The Hudson

アマゾンに予約していた、『ドリームガールズ』のDVDが金曜日に届き、週末に観ようと思いながら、ヤン・シュヴァンクマイエルブラザーズ・クエイDVDの短編を繰り返し観てばかりで、結局観ないまま。夕食後に観ようかと思っていたら、夕食を取りながら観ていたテレビで、ロシアの極東ウラジオストクが、経済発展を遂げているというニュースがやっていて、エネルギー輸出の好調で、先に裕福になっていっているモスクワやヨーロッパに隣接する地域よりも遅れてようやく、住む人々の暮らしも豊かになりつつあり、ロシア政府も極東地域の発展に力を入れているそうです。そのニュースを観ていると、ふと『ハドソン河のモスコー』をまた観たくなり、『ドリームガールズ』ではなく、こちらを鑑賞。
『ハドソン河のモスコー』は、2007-04-22のブログでも、ちらと書いたけれど、大好きな映画『ハリーとトント』を撮ったポール・マザースキー監督の作品なのですが、最近まで知らなくて、ネットの掲示板書き込みから存在を知り、ハリーとトント同様良い作品だということで是非観たいなと思っていました。その矢先、運良く中古ビデオを見つけて購入し(残念なことに、日本ではまだDVD化されていません*1)鑑賞し、期待通りの良作で、『ハリーとトント』同様、愛着ある映画になりそうです。実は、ビデオで観た後、US盤の DVD"Moscow On The Hudson" を購入し、DVDでも再見していて、今回もそのUS盤DVDで鑑賞です*2
この映画は、1984年制作作品で、舞台は当時のアメリカとソ連、つまりペレストロイカ以前、まだ冷戦緊張関係が続いてた時代の両国。ロビン・ウィリアムス演じる、モスクワのサーカス団の楽団でサックス演奏し、ジャズを愛している主人公ウラジミルは、KGBの監視付きでサーカス団のNY特別興業に出かけるのですが衝動的に自由を求めて走り出し、アメリカに亡命することに。ウラジミルにとって「アメリカは奇妙で素晴らしく」("America is strange and wonderful.")、自由の国に来た喜びと、自由の国ゆえの苦労や矛盾にも直面しながら、他のマイノリティ達との交流、友情、恋愛などが描かれます。この映画で、ウラジミルは、亡命以外、何か、派手で大きな事をなしとげるわけではないですが、彼じゃないと送れない人生を、前へ進みながら生きています。派手な演出で悲しみを盛り上げ、泣かせようとするような作品ではないですが、とても心に深く染みいる、静かな感動がある、暖かい視点を持った佳作です。
ウラジミルが亡命を決行する場所は、サーカス団が、アメリカ滞在の最後に、おみやげを買いに訪れる、デパートなのですが、彼らは、ソ連にはない、アメリカのブランド品など贅沢品を、珍しさと憧れの目で嬉々として試したり買ったりします。先に触れたウラジオストクのニュースで、経済発展により贅沢品やブランド品が並ぶようになったショッピングセンターで普通に買い物をする人々を観ていると、対照的な人々のこのシーンが思い起こされ、また再見したくなったのでした
この作品、US盤の DVD で英語字幕で観ていると、英語聞き取り能力の低い僕は日本語字幕のビデオで観ていたときは分からなかった、発見がいろいろあります。特に、ロシアでのシーンは、主人公達はほとんどロシア語で会話し、そこに字幕が入るのですが、オリジナルの英語版の字幕ではどうなっているのかは、日本語字幕のみのビデオからは分からない部分です。例えば、冒頭付近で、KGB の、いけすかない男(なのですが、どこかしら抜けていて、憎みきれないものは感じさせられるキャラです)に、ウラジミルは配給で得たばかりの靴を渋々あげることになります。それを見ていた親友が、ウラジミルを揶揄するシーンで、その日本語字幕は、「見てたぞ、そんな奴にゴマをすりやがって」と普通なのですが、英語字幕では "Did you lick his ass good? Was it tasty?" と、ちょっと面白い表現になっています*3

ハドソン河のモスコー [VHS]

ハドソン河のモスコー [VHS]

*1:2013-04-13追記 2013年4月、オンデマンドDVDという形ですが、ようやく国内盤DVDがリリースされました。[http://shop.tsutaya.co.jp/%E3%83%8F%E3%83%89%E3%82%BD%E3%83%B3%E6%B2%B3%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC-%E3%80%90TSUTAYA%E9%99%90%E5%AE%9A%E5%95%86%E5%93%81%E3%80%91/product-dvd-4547462084538/:title=ハドソン河のモスコー 【TSUTAYA限定商品】]

*2:2013-04-13追記 このUS盤はスタンダード収録、その後購入したUK盤はビスタ収録、2013年4月リリース国内盤はUSマスターだそうですが別マスターなのかビスタ収録でした

*3:2013-04-13追記 2013年4月リリース国内盤DVDでは、ロシア語シーンには英語字幕もついていました