「女番長 タイマン勝負」

先週のことだが、「女番長 タイマン勝負」が東映おとなの映画BBで配信が開始されていたんで、入会しているShowTime経由で鑑賞。関本郁夫監督・池玲子主演の女番長<スケバン>シリーズ6作目。池玲子は、スケバン映画これが最後の作品。
池玲子演じる主人公は、姉の敵を取る為、ヤクザのボス安部徹を刺し殺そうとして少年院に入れられる。そこで番張るスペードの美和らからの過酷なリンチを受けるが、冒頭ではシリーズいつものスケバンらしさが見えない池玲子は、抵抗のセリフも「やめてよ」と少々弱々しい。しかし、出所が近づいた美和の台詞「もしこの敵を討ちたかったら、阪はミナミ、スペードの美和を訪ねてきな。いつでも相手になってやるよ」が、池玲子の番長体質に火をつける。この時の、池玲子の表情の変わり方が素晴らしい。そして、軽快なテーマ音楽と共に、憎いスペードの美和無き後の施設で、がんがんズベ公達を締め子分を増やし、あっという間にいつもの番長姐御っぷりを獲得していくオープニングが痛快。
玲子姐御は、出所後、ミナミで仲間と、ヒマワリ会を大胆に挑発しながらスペードの美和を捜すも、肝心の美和は蒸発しており、ヒマワリ会で番を張っているのはカミソリ絵里こと衣麻遼子。きっちりタイマンで締めてヒマワリ会は池玲子のものに。
東映スケバン映画では卑劣な敵役常連の、衣麻遼子は、いつもとは一味違う役柄で、ヒマワリ会から追われる中、ただ1人ついてきた親友はるみと、酒を飲みながら、生き別れになった自慢の兄のことを語るのが、すごくいいシーン。
キャロルの「ファンキー・モンキー・ベイビー」がBGMで流れる中、なぜかママチャリで田舎の畦道を青春サイクリングしている、これまた、らしくない池玲子達ズベ公集団。河原で野良犬達を追いかけて捕まえるのだが、ペットにするなど甘っちょろいことをせず、ホルモン焼きにして飯の種にしてしまうのは、流石70年代東映作品、ブラックジョークも半端無し。
そして、ようやく見つけた、スペードの美和。当然、玲子姐御は施設での借りを返そうと、タイマン挑むが、すっかりキャラ変わってしまった無抵抗なガンジー美和。一緒に暮らす元レーサーでポンコツ屋の健一へ二度と喧嘩はしないと誓ったらしい。健気に互いを庇いあう二人を、バーナーを手に持って追い詰める池玲子の方が、いつの間にか悪役化してしまい、おいしくない役回り。ラブラブの二人に、すっかり気を殺がれた玲子姐御は、ポンコツ屋にみんなで間借りすることを条件に復讐を諦める。「スペードの美和が男に惚れたか。まったくなんのためにはりきってきたんだか」と呟く可哀想な玲子姐御。
その後、衣麻遼子と、渡瀬恒彦演じるやくざになり名乗り出られな兄との運命の悪戯や、健一の持つ土地を狙う安部徹達との確執が絡みながら、クライマックスへと物語は向かっていく。
最後は、池玲子を先頭に、健一を殺された美和らズベ公達が安部徹達やくざを、ぶっ潰し、カタルシスが解放されるという、お約束の展開。
関本監督のこの女番長は、鈴木則文監督の、アナーキーで猥雑さとアクが強烈なスケバン作品と比べると上品(あくまで、則文東映作品との当社比)なので、そういうのを期待すると若干肩透かしかもしれないし、僕自身、鈴木作品の方が好みではあるのだが、また違った魅力ある良く出来たプログラム・ピクチャー。本作の池玲子は、天性の陽性が、シリーズで一番よく出ているように思う。