オシムの言葉

オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える

オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える

前から読みたいと思いつつ買いそびれていた本だが、オシムが日本代表監督になることが決まったこともあり、やはり読んでおこうと、ようやく水曜日に購入。このところ仕事で帰宅が遅くなっているので、土日にでも読もうと買っていた本だが、読み出すとあまりにも面白くて、週末待たずして通勤中や就寝前の時間を使って一気に読んでしまった。含蓄があり、ユーモアもある、オシム語録は、ジェフの公式サイトでも多数紹介されているが、本書は、オシムの言葉をただ紹介するだけでなく、複雑な民族問題を抱えた国に生まれ育ち、そして代表監督在任中にその民族問題による陰惨な戦禍に愛する家族や選手達が巻き込まれていく様を目の当たりにしていくオシムの激動の半生と監督としての歩みを丹念な取材を通じ書き、なぜオシムが人の心に残る言葉を発することができるのか、言葉の裏に隠された、より深いオシムの思い、意図などを教えてくれる。
オシムの日本代表監督就任を、明らかに自己の保身や協会の責任逃れの為に利用し、W杯での惨敗と日本代表の抱える問題点からをも眼を反らさせようとしている、川渕のやり方は気に入らないが、この名将を迎えることは、未来の日本代表に取って、大きな財産となるであろうことを予感させ、期待を抱かせてくれる。オシムが選ぶ代表選手達そして彼らの見せるサッカーがどんなものになるのか、とても楽しみだ。

「無敵超人 ザンボット3 DVD メモリアルBOX」と「20年目のザンボット3」

20年目のザンボット3 (オタク学叢書)

20年目のザンボット3 (オタク学叢書)

イデオンを再体験する中で、このザンボットも観たくなり、6月の終わりに購入していたDVDと本。先週今週の週末で一挙に全23話を観た。ザンボットは内容だけは、だいたい知っていたが、実際に観るのは今回がほぼ初見であった。
僕がガンダム・イデオンを始めとする富野アニメを欠かさず観ていたのは、ガンダム本放送終了間際にその存在を知った小学5年生から、中学3年ぐらい、ダンバインぐらいまで。そのダンバインを、回が進むにつれ、あまり面白いと思わなくなったことが、富野アニメから離れるきっかけとなり、次のエルガイムは最後まで見ることなく挫折し、Zガンダムなど、その後の富野アニメは見ていない。
ガンダム以前のものは、ダイターン3をガンダムブームの頃の再放送で見ていたように思うが、このザンボット3は再放送でもあまり観た記憶が無い。本放送が、始まったのが1977年、小学3年生のときで、ロボットアニメをもう観なくなっていた時期だ。当時はロボットアニメというと小学校低学年以下が主に観るようなものというのが、大人も子供も一般的な認識であったと思う。そんな時期に、そんな常識を覆し、後のガンダムに始める、所謂リアルロボットアニメの先駆けとでもいうべき、ハードな内容を含んだ、ザンボット3という作品が生まれていた。
富野監督は、ザンボット3で、それまでの、ロボットアニメの枠組みも多く残しつつも、人間爆弾という衝撃的な仕掛けなどを使い、後に「皆殺しの富野」という異名を取るだけあって、容赦なく登場する人々を冷徹にも思える表現で殺していき、戦争というものを、それまでのアニメの中での戦いの描き方とは次元の異なるリアルなものとして描いている。そして最終回で善悪の相対化となる設定を明らかにし、単純な勧善懲悪が主流だった子供向けアニメの世界に一石を投じる。それらシビアであったり、救いの無い表現を、作品全体で随所にとりながらも、対比的に、希望を感じさせてくれるラストシーンは、見事で、感動的で、涙腺が緩む。「名作」である。
「20年目のザンボット3」はその名作ザンボット3の研究本。力著で全体的に面白く読めた。著者は本放送終了当時の富野監督と会い話を聞くという貴重な体験をしていて、その会談内容について書いた、タイムスリップインタビューの項が、特に興味深く面白かった。尚、本書の帯の惹句の「ガンダム、イデオン、そしてエヴァ 全てはザンボットから始まった!!」は大袈裟な売り文句でなく、アニメの歴史的事実だと思う。