未来を写した子どもたち

年末に「梅田ガーデンシネマ」で鑑賞。

インド・カルカッタの売春窟に生まれついた子供たち。彼らは外の世界を知らず、夢を持つことも許されない。だがある日、子供たちはカメラと出会ったことで、自分たちに無限の未来と希望があることを知る――。ニューヨークで活動する写真家、ザナ・ブリスキーが、売春婦の取材のためこの地を訪れたとき、そこで暮らす子供たちの悲惨な運命を目の当たりにし、衝撃を受ける。そして彼女は、子供たちをここから救い出したいという思いから、写真教室を開く。そこでは、インスタントカメラを使って、子供たちに写真のいろはを教えた。後に、子供たちの撮った写真は高く評価され、ニューヨークで写真展を開催するまでに。だが、子供たちを生まれ育った境遇から抜け出させることは容易ではなかった…。映像作家、ロス・カウフマンがザナの活動を映像に収めたドキュメンタリー。第77回アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品。(公式サイトより引用)

カメラを持つ子供達の笑顔や眼差しは光に満ちていて、撮る写真も、感性豊かで、きらきらと輝いている。その光と輝きを映画は見事に捉え映し出す。この子供達に、幸せになってもらいたい。心から思う。
だが売春窟に生まれついた子供達の現実は、暗い闇の隣にある。写真の中にはその現実を映し出しているものもある。
11歳の少女タパシは、「どんなに貧乏だって幸せになれると思う」と言った。希望を忘れず健気に生きようとしている言葉であるのだけれど、それ以上に、その言葉は、貧しく辛い現実からは、抜け出せないのだろうという、あまりに痛切な絶望を、11歳の少女が抱えてしまっているということではないか。
10歳の少女コーチは「もしここを抜け出して学校に行けたら、素敵な未来が待ってるんだろうな」と夢見る。生まれる場所が違えば、当たり前の権利が、彼女たちは、与えられてはいない。暗い闇にずっぽりと落ちたくないと思っていても、子供達には、どうすることもできない現実がある。
写真の才能を認められ、外国に招待される機会を与えられるも、売春窟に産まれた為に、パスポートすら容易には発給してもらえない少年。「僕の将来には希望なんてないんだ」。
ザナ・ブリスキー達によって、この映画に登場した子供達の中の何人かは、闇に背を向け、素敵な未来へ通じる道を歩き出す。行くのをなんとか止めようとする母親達を、素敵な未来は自分で切り開くのだとばかりに凜として振り切り、、車の中で希望に満ちた顔を見せる、明るく活発な一人の少女。パスポートを取ることが出来て明るい笑顔を取り戻す少年。感動的で涙が出る。
しかし、その道を結局歩き続けることができなかった、子供も、その中にいることを伝える、終幕のテロップが、暗い闇の現実を、また突きつけてくる。明るく活発な少女が、その中にいた。心が凍り付くようなショックだった。
個人が手を差し伸べようとしても差し伸べられる手には限りがある。そして、その限りの中ですら、どんなに手をつくしたところで、救いきれない子供達は大勢いるのだろう。それでもザナ・ブリスキー達の取った行動は尊く素晴らしい。
この映画の収益の1%、また劇場でも売っているポストカードの収益の10%は、支援団体の活動に使われるそうだ。多くの人に足を運んで貰いたい映画。その支援になるということとは関係なく、アカデミー賞受賞が頷ける、優れたドキュメンタリであり、観てよかったと思える映画だった。

未来を写した子どもたち (ポストカードブック)

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未来を写した子どもたち オリジナル・サウンドトラック

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