All work and no play makes Jack a dull boy.

シャイニング」北米盤DVDようやく鑑賞了。ジャック・ニコルソンの、怪演〜というより、狂演(あるいは凶演)とでもいうべきか〜による、ジャック・トランスのサイコっぷりは、何度観ても凄く、キューブリックが作り出す、心理的な恐怖を呼び起こすシーンを、より際立たしている。
一方、この映画からは、ただ恐怖だけではなく、キューブリックならではのブラックユーモアも随所に感じるし、ニコルソンからエキセントリックすぎるともいえなくもない演技を引き出す、キューブリックの演出は、時になんともいえぬ滑稽さをも醸し出し、逆にそのことが狂気を真に迫らせてくれていると感じる。滑稽に映ることがあっても、いや、あるから、ジャック・トランスにはリアルな狂気もあり、だからこそ怖い存在なのだ。核戦争はあまりにも恐ろしくまともに扱おうとすると笑えないジョークになるからと、笑える作品として核戦争の恐怖と軍の狂気を映し出し、観客達に真に迫らせた「博士の異常な愛情」を撮ったキューブリックらしい造形のキャラクターだろう。斧で壊したドアの割れ目から顔を覗かせ、今から殺そうとしている妻と、それを見守る観客たちに映画中最高の恐怖をいざ与えようとするシーンで、"Here's Johnny!" なんてアドリブ*1をかませる、ジャック・ニコルソンは、キューブリックのジャック・トランスを演じる適任者であったと思う。
尚、この映画で僕が一番ぞっとしてしまうシーンは、見出しにした文章が出てくるシーン。

*1:このセリフ、アメリカのテレビショーでコメディアン司会者登場の際のアナウンスからの引用なんだそうだ。尚、キューブリックはそのことを知らなかったらしい