ダーティハリー吹替

去年、日米で新たにリリースされた、『ダーティハリー』のDVDとブルーレイを、山田康雄氏の吹替が収録されているという理由で、購入した人は多いだろう。それまでリリースされていたVHSやDVDは吹替がなく、山田康雄のハリー・キャラハンを愛する人達を失望させつづけていて、念願のリリースであったのだ。
僕はといえば、ガキの頃、山田康雄=ルパンのイメージが強すぎたせいか、ハリー・キャラハン=山田康雄っていまひとつ合ってない気がして、そんなに思い入れがなく、日本版の値段も高かったので、最初は購入するつもりはなかった。ところが、DVD,ブルーレイ

ともに、日本盤の半値ぐらいで買える北米盤もディスクの内容は同じで、吹替も収録され本編と特典への日本語字幕あり、しかもDVDの方もリージョンオールというのを、
http://blog.fantasium.com/archives/2008/06/08-212430.php
で知り、吹替云々を抜きにしてもお買い得だと、北米盤DVDの方の購入を決めた。しかし、買ってはみたものの、他に観る物があったりで、去年の夏以降、DVD棚に入れっぱなしで観ていなかったのだが、『グラン・トリノ』を観たら、久しぶりに『ダーティハリー』を観たくなって、先週末にようやく1作目を、オリジナル音声+日本語字幕及び、吹替+英語字幕で鑑賞。
シリーズ1作目の『ダーティハリー』は、言うまでもないことだけど、やっぱり最高に面白い大傑作。
法が裁けないが、許されざる、いかれた殺人鬼を、名台詞とともに、ズドーンとぶっ殺してしまう、最高のカタルシスの訪れとともに、警察バッヂを投げ捨てるハリーの姿には、苦い余韻が残る。これもまた言うまでもないことだけど、やっぱり、語り継がれるべき名ラスト。日本語字幕で観てると、セリフ省略が気になる為、山田康雄吹き替え+英語字幕でも、観なおした。アルティメット・コレクターズエディション買っておいてよかった。
吹替は、収録ソフトを熱望していたファンが多いのも当然で、滅茶苦茶良いよ。声質が似ているわけじゃないけど、クールな中に人間味があって。なぜ、昔、この良さに気付かなかったんだろ。
ダーティハリー』は、吹替翻訳も良いのではないだろうか。吹替の中には、せっかく字幕に比べて省略の制約減るのに、なぜそんな雑な翻訳するんだと、英語力不足の自分でも、イライラさせられる、肌に合わない物もあるが、進藤光太氏のシリーズ1作目翻訳にはそういうストレスは感じなかった。僕が気付ける限りでも、意訳とか省略もあったが、そういう部分も、全部ではないが、概ね好きなタイプの訳し方に感じられた。
音源がテレビ用だから、吹替がないところもあって、そこは英語音声と字幕に変わるんだけど、全部吹き替えで観たいぐらい。
http://members.at.infoseek.co.jp/ashby/quotes_harry.html
で、字幕と吹替と原語をいろいろ比較している方がいたので、興味ある人は上のリンクを読んでみてください。

自分に、原語も完璧に楽しめるぐらいの英語力が有れば、もっと詳しく比較しながら観られて面白いんだろうなぁ。

http://www.amazon.co.jp/dp/B0016Y9E8S/
のレビューを読むと、山田康雄吹替『ダーティハリー』ファンの人達からすると、2や4の吹替用の音源が理想的ではなかったりもするようなので、ワーナーにはもっと頑張って欲しかったところではあるし、シリーズ全て傑作とはいえないのだが、それでも、山田康雄吹替と豊富で長時間の映像特典がある、「ダーティハリー アルティメット・コレクターズエディション」は、購入満足感あるDVDセット。
グラン・トリノ』、ウォルト・コワルスキーのイーストウッドも良かったけど、ハリー・キャラハンだった頃のイーストウッドも忘れちゃいけないというわけで、暫くこのボックスは楽しみたい。

Dirty Harry Ultimate Collector's Edition [DVD] [Import]

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【初回限定生産】ダーティハリー アルティメット・コレクターズ・エディション(7枚組) [DVD]

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ダーティハリー アルティメット・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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The Hunt for Gollum

イギリスのトールキン指輪物語ファンの雄志達が自主制作し、予告されていた、『The Hunt for Gollum』の、オンライン公開が、動画サイトのDailymotionで、日本時間で3日ぐらい前から始まっています。

尚、動画再生プレーヤーの、menu のところをクリックすると、画質*1や各国語の字幕*2が選べます。
僕も昨夜観てみたのですが、見応えがある、とてもよく出来た作品でした。アラゴルンがゴクリ(ゴラム)を捕まえてガンダルフが尋問したという中つ国の史実(笑)に、オークや黒の乗り手との戦い、アルウェンとのエピソードなどを上手く絡めた脚色で、エンターテインメントな短編映画になっており、戦闘シーンなどの効果音、演出は、ピータ・ジャクソン的で迫力あり、これが制作費、僅か£3000で制作されたのだというのですから驚きです。海外のトールキンファンは凄いですね。
役者さんたちも、ゴクリもよくって、アラゴルンガンダルフはちょっと似ている人をうまく見つけてきたと思います*3。約40分あります。

下の動画は予告編。

ちなみに、"The Hunt for Gollum"とは協力関係にある姉妹プロジェクトに、"Born of Hope"があります。こちらも、完成と公開が楽しみです。

【追記 2009-05-24】公式サイトの Watch The Film 見たら、YouTubeにも本編がアップロードされているようなので、貼っておきます。

*1:HD画質では重いとき画質を落とすといいかも

*2:日本語字幕は今のところありませんが、英語字幕を表示させるとヒアリングが苦手でも観やすいでしょう

*3:映画 Lord of the Rings の俳優さん達のファンの中には、もしかしたら、イメージが崩れるから嫌だという意見もあるかもしれませんが、あくまでファンムービーであることを考えて、大らかな気持で観ればとても楽しめるのではないでしょうか

『吸血少女対少女フランケン』ブックマ〜ク

2009-04-22で紹介した予告編が楽しすぎる『吸血少女対少女フランケン』(Vampire Girl vs Frankenstein Girl)について書いてあるサイトやブログ・フォーラムなどを個人・関係者・映画関連などいろいろ巡り中です。
こんなに楽しく繰り返し観れちゃう予告編でも、人体が破壊されて血がばしゃばしゃ噴き飛んでいる聞くと、最初から観ない人は多いでしょう。でも、そういう苦手意識を持っている人でも、実際に観たら何人かは、こういう映画も悪くないのでは!?いや、これいいよ!などと思って、楽しめるような予告編だと思うので、苦手な人も観て欲しい!もちろん観て、やっぱり駄目だって人はいるとは思いますが、ここにあるのは、観客を楽しませる為の、ファンタジーで痛快娯楽な血飛沫人体破壊ですよ!

以下、巡ったところの一部



『吸血少女対少女フランケン』予告編

西村喜廣・友松直之共同監督作品の『吸血少女対少女フランケン』(Vampire Girl vs Frankenstein Girl)予告編登場!
夏の公開に期待高まる、西村映造印の、血みどろずったずた噴流血に人体粉砕でろんでろん!

  • vampire girl vs frankenstein girl予告篇


東京残酷警察や、Reject Of Deathでは、腕切れそうなぐらい深く切ってたリスカシーンだったけど、今回は遂に腕切れてるよ(笑)
セーラー服の吸血美少女役は、川村ゆきえ嬢。 http://kawamurayukie.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-4b89.html
ゴスロリ&着物美少女フランケン役は、乙黒えり嬢。「お姉チャンバラ」(未見)の子だね。 http://ameblo.jp/elly-go-round/entry-10247067042.html
予告編に出てくる、しいなえいひさんの役どころはなんだろう。
とにかく、西村映造ファンとして滅茶苦茶楽しみな映画ですよ。 原作は内田春菊のコミック(未読)。

『東京残酷警察』DVD 初回限定“GORE EDITION"

楽しみしていた日本版『東京残酷警察』 初回限定“GORE EDITION”が4/10 に届きましたよ。
初回特典の、アウターケース渋くてかっこいいです。特典も盛りだくさんで週末堪能しました。感想はおいおい。
特典は以下。

  • オーディオコメンタリー(西村喜廣監督、しいなえいひ、高橋ヨシキ
  • TOKYO GORE POLICE short collection 7本
    1. オープニング・ダイジェスト(西村喜廣監督)
    2. 東京残酷ドカタ(塩崎遵監督)
    3. 企業CM ナラヤマ(高橋ヨシキ監督)
    4. ザ・ヒロイン・オブ・マイ・アドゥレセンス(石井飛鳥監督)
    5. 政府公報CM 外国人登録制度(高橋ヨシキ監督)
    6. 63minutes in the movie...(西村喜廣監督)
    7. エンドロール(東京残酷警察メイキング写真集
  • 残酷な舞台裏(メイキング)
  • インタビュー集(西村喜廣監督、しいなえいひ)
  • 舞台挨拶
  • 劇中のTV CM(フルサイズ)
  • 予告編集
    1. 劇場予告編
    2. 幻のプロモーション用映像第一弾
  • サントラCD(19曲、64分45秒収録)
    1. 残酷の記憶 The Memories Of Tragedy
    2. メインテーマ Tokyo Gore Police Main Theme
    3. ブレイン・ウォッシュ・パトロール Brain Wash Patrol
    4. ミート・トレイン Meet Train
    5. 血瓶が10本 Ten Blood Bottles
    6. DJモモの部屋 DJ MOMO's Room
    7. 痴漢は犯罪 Guilty Scarely
    8. アンデパンダンのママ Mama I Love You
    9. DNA操作 D.N.A.
    10. 人体改造バーAKA Body Remodeling Bar AKA
    11. 良い事、悪い事 Good Or Bad Thing
    12. 改造手術で遊びましょ Let's Enjoy Operation
    13. ワニ女vs隊長 Captain VS Crocodilian
    14. 署長は笑う Wire – Puller
    15. エンジニア狩り Great Hunting
    16. 目覚めのレクイエム Requiem
    17. ルカ覚醒 Awakening
    18. 犬女Vsルカ Luka's Battle
    19. 署長Vsルカ Last Battle
  • 初回限定 高橋ヨシキデザイン特製アウターケース

東京残酷警察 初回限定“GORE EDITION” [DVD]

東京残酷警察 初回限定“GORE EDITION” [DVD]

真マジンガー衝撃!Z編

幼少の頃、マジンガーZグレートマジンガーに燃え、大人になってからは「真ゲッターロボ」の今川泰宏演出回に燃えた一人として、これは観るしかない、「真マジンガー衝撃!Z編」が、昨日から始まった。迂闊にも放送はじまってるのを忘れててテレビでは見逃したものの、放送終了後1週間最新回が配信される、バンダイチャンネルで鑑賞。

初回からハイテンションでハルマゲドンの様相示す最終決戦!!すごいわ、これ。2回観てしまった。どうやら、過去のマジンガーシリーズのみならず、バイオレンスジャックなどの永井豪ワールドからも引用して融合した世界観のようで、今回のクライマックスに向けての物語が、来週以降から時間を戻してはじまる模様。初回、グレート世界のミケーネ帝国や、剣やグレートらしきシルエット、兜剣造も出てきたから、クライマックスの後はグレート編へ続くのか?
昔のマジンガーに出てこない、キャラの中では、あしゅら軍団なんぼのもんじゃいな、くろがね屋の衆がかっこいい。
島本和彦先生にも大受けの全身ロケットパンチにも燃える。
永井豪本人がマジンガー世界の再構築を目指した、「マジン・サーガ」「Zマジンガー」は未読なのだが、中断や、第1部完のままになっているということは、おそらく成功はしなかったのだろう。しかし、今川真マジンガーは、その再構築を成功させ傑作になる可能性大いにあると思わせる初回。

『地を這う魚 ひでおの青春日記』

『地を這う魚 ひでおの青春日記』

                                                                    • -

適当なあらすじ
1960年代末、上京した、吾妻ひでお青年は、働く工場で、一つ眼の「奴々」(どど)をプレスすれば噛まれ、「ぐずり」を梱包しようとして首を絞められ、縞馬の上司に「雁鬼を出すな」「要領悪い」と罵られていた。
向かない工場仕事に見限りをつけた、吾妻青年は、仕事を辞め、同郷で漫画仲間の盟友達、梟「まつちゃん」や、蟻食「わへーちゃん」、鰐「わてんちゃん」、犀「ゆきみちゃん」らと同じアパートでの貧乏暮らしと、馬「いててどう太郎先生」の元でアシスタントを開始する。妖精の少女に駄目だしされたり、ギャグ漫画のライバル「ゆきみちゃん」にデビューで先を越されたり、安い給料に腹をすかしながらも、魚、蛸、烏賊が地を這い空を泳ぎ、ロボットや異形の生物達が街を闊歩する世界で、夢である漫画家を、仲間達とともに目指すのであった・・・

                                                                    • -

というわけで、吾妻ひでおの最新刊『地を這う魚 ひでおの青春日記』は、アシスタントをしながら漫画家デビューを目指す、吾妻ひでお青年と、同じアパートに住む仲間達のほろ苦く可笑しい青春の日々が描かれた自伝的作品だが、上の適当な途中までのあらすじに書いたように、傑作連作『夜の魚』『笑わない魚』と連なる、吾妻ひでおの幻想と妄想による暗く混沌とした異世界がその舞台だ。人も、女の子と吾妻ひでお青年以外は皆、動物や鳥など異形の姿をしている。

若き漫画家の青春物語として見ても、吾妻ひでお一流の新作不条理漫画として見ても、面白い作品で、買った日の帰りの電車で一心不乱に一気に読み終えた。自分が、ここ最近の、吾妻ひでお作品で読んだものの中では、飛び抜けてよかった。傑作である。
吾妻ひでお漫画の傑作をまた読めたのだと嬉しくて仕方ない。ぎっしり描き込まれた絵は、一時ブランクやアル中の影響のせいか絵が衰えて見えた時期の面影はなく、画筆健在ぶりを感じさせられるものだ。世間に向けて、吾妻ひでお復活の狼煙となった『失踪日記』も傑作だし、とても好きなのだが、やはり、かっての吾妻ひでおファンとして、本当に読みたかった天才・復活を感じさせる作品は、現実から離れた物も見せてくれる、こういう作品なのであったのだなぁと思う。

80年代初頭、吾妻ひでおの、純文学シリーズと呼ばれる傑作群を纏めた『陽射し』という単行本を読んだとき、僕はこの人はもうすぐ自殺してしまうのではないだろうかと心配になったことを思い出す。特にそれを感じた『水底』などの作品を今改めて読み返しても、なぜ当時の少年だった僕が、吾妻ひでおが自殺するとまで感じたのかは分からないのだが、太宰治への傾倒や、躁鬱病であることをインタビューで語っていたのを目にしていたことも、影響したのかもしれない。
吾妻ひでおは、その後何年か立ってから失踪もしたし、自殺未遂もあったようだけれど、幸い生きてくれていて、傑作をまた読ませてくれている。本当によかったと思う。
『地を這う魚』は、吾妻ひでおの青春時代の反映か陰鬱さも作品全体にあるが、『陽射し』を読んだときのように死の予感を感じることはなかった。最終話で、吾妻青年が、妖精の女の子に語る言葉は、当時の夢中に漫画を描いていた、吾妻ひでおの偽らず気持であろうし、今の、吾妻ひでおの言葉でもあるのかもしれない。何か悟ってしまったような言葉でない、終わった人の言葉ではなく、未来を感じさせる若々しい言葉だ。
そして、あとがき漫画の最後のコマには、こうある。『魚達 今日も元気に地を這ったり空を飛んだりしています』〜吾妻ひでおの目に映る、不条理な異世界も健在だ。これから、吾妻ひでおは、まだまだ傑作を生み出していってくれる予感がある。

というわけで、吾妻ひでおが、お好きな皆さん、絶対、買いの一冊!
尚、本書と併せて、傑作、『夜の魚』と『笑わない魚』を読むのもお薦め(未読の人)。これらも吾妻ひでお先生のインタビューによると、自伝漫画としてファンタジー要素を加えて描いたそうですが、『地を這う魚』よりも非現実性は強いです。
手に入れやすい本だと、『夜の帳の中で―吾妻ひでお作品集成』や、『COMIC 新現実 Vol.3 特集 吾妻ひでおの「現在」』に収録されている。

Comic 新現実 Vol.3 (単行本コミックス)

Comic 新現実 Vol.3 (単行本コミックス)